清潔なホームレス
山手線の終電は大体遅れる。
はやく帰りたくても大体遅れる。
体に貼った湿布薬が冬の寒さを加速させていくので、俺は風邪をひいてしまうのではないか、冬将軍が去るまで油断はできん。と勝手に一人相撲をはじめている。
その時その時、一番望んだものは手に入らない。有識者は欲が足りないと、そう言う。
俺は侮蔑の目を向け唾を吐き大股で歩きながら、都合の良いことばかり言うな!と叫ぶ。
アスファルトには静かに俺の雫が落ちる音だけが響いていた。
まるで幽園の様なそこには俺と街灯以外なにひとつ存在していなかった。
やがて道のりの中間へたどり着いた時、次の煙草が存在しない事に気付いた。
阿婆擦れな緑の光が俺を受け入れてくれる。
24時間365日の不衛生な看板が俺を受け入れてくれる。
そして夜は、鬼に飼いならされた犬の様な声をだす。獰猛でいて怯えている様な其れは、ただ俺の身体を支配する為に、存在しているのであった。